弁護士・税理士・行政書士といった士業を取得した際は、自分の事務所を持ちたいと考える方も多いのではないでしょうか。

士業は専門性が高く安定した職業のように思われますが、独立開業するためには経営やマーケティングといった視点からも物事を考える必要があります。見通しが甘ければ、資金不足などの理由で廃業に追い込まれてしまうこともあるでしょう。

そこで本記事では、士業が独立開業する上で大切なポイントについて解説します。よくある失敗パターンなどについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

士業の現状

士業は、定年がなく、合格者が毎年増えるため、どの士業も全体的に増加傾向にあります。例えば、弁護士や税理士は以下の人数です。

弁護士:45,005人(2023年1月1日時点)
税理士:80,467人(2023年1月31日時点)

以前に比べると競争が激しくなり、生き残るためには戦略的にビジネスを行うことが大切になっています。

士業の独立開業で準備すること5個


士業の独立開業を行う前にどのような準備をすればいいのでしょうか。重要なポイントを解説します。

1. 事業内容を考える

「主な事業は何か」という点を簡潔に表すのが事業内容です。ターゲットやサービスについての検討を通じて事業内容を決定していきます。

例えば、弁護士なら幅広く業務を受けるのか、離婚や交通事故・刑事事件などに特化するのか、企業を相手にするのか、などどんな領域で勝負するのか考えておきましょう。

事業内容は定款に記載する他、金融機関に提出する書類にも記載する機会があります。誰が見てもわかりやすいよう簡潔な表現でまとめるといいでしょう。

2. 市場環境を調べる

顧客のニーズの傾向や業界の動向などについて調べることで、市場の状況を把握します。「見込み顧客が多いエリアはどこか」「ニーズの多いサービスは何か」など、市場について調べることで理解を深めていきましょう。

また、専門性の高い士業では関連する法律の改正にも気を配ることが大切です。

3. 競合を調べる

サービス内容が似ている競合や、同じエリアに開業している競合についてもリサーチしましょう。インターネットを通じて競合のサービス内容や料金を調べることで、自分が開業する際の参考となります。

また、見込み顧客が多く競合が少ないエリアに開業することも大切です。開業を予定しているエリアについて調べて、成功する見込みがあるかどうか検討しましょう。

4. 自分の強みを棚卸しする

集客や営業を成功させるためには、自身の強みについて把握して、適切な売り出し方を行うことが重要です。

例えば、税理士であれば「相続税の相談に強い」「大手の会計事務所に勤めていた」といった強みが考えられます。スキル・経歴はもちろん、「誰にでも好まれる丁寧な対応ができる」といった人柄の面まで、 総合的に検討してみましょう。

自身の強みを元に、ホームページやチラシなどに掲載する内容や、営業の方法などについてもイメージを膨らませていきます。

5. 財務計画を作る

開業してから資金繰りについて悩むことのないよう、事前に財務計画書を作成します。事務所の運営に必要な支出や期待できる売上、融資の状況などをまとめておきましょう。

財務企画書を作成する時は、無理をせず達成できそうな売上予想を記載します。また、顧客との契約終了や従業員の採用といった事態にも対応できるよう、余裕を持った数字で記載するといいでしょう。

財務計画書には決まった様式がないため、事務所の状況に合わせた様式で自由に作成することが一般的です。

士業の独立開業費用の目安

士業の独立開業に必要なものとその費用は、以下の通りです。

・パソコン:10万円程度
・名刺:1,000円程度
・チラシ:3万円程度
・ホームページ:20万円程度
・事務所:開業する場所による
・協会の登録費、会費など:業界による

事務所にかかる費用は開業する場所によって金額が大きく変わります。 レンタルオフィスや貸事務所などを利用すれば、月額数万円程度に抑えられますが、本格的な事務所を構えようとすれば、数十万円以上となることもあります。

事務所を借りる際は敷金や前払い分の家賃などもあわせ、家賃の8倍程度の費用がかかると考えましょう。

ただ、士業は設備や仕入にお金がかからないため、60万円〜100万円といった低予算で開業することも可能です。自宅で開業したり、ホームページやチラシを自作したりすることによって、さらに費用を抑えることもできるでしょう。

なお、税理士が使う会計ソフトや、関係者に開業したことを知らせる挨拶状など、必要なものは事務所によってさまざまです。自身の開業にとって必要なものをリストアップし、その費用を計算してみましょう。

士業の独立開業成功方法8個


士業の独立開業を成功させるために行いたい方法を紹介します。

1. マーケティング戦略を考える

顧客を獲得するための方法を具体的に考えましょう。

例えば、ホームページを使った集客方法はWebを活用する人が多いので主な方法の一つです。しかし、ホームページにアクセスしてくれる人がいないと、問い合わせをもらうことはできません。

検索結果で上位表示させる、Web広告でホームページを見てもらう、SNSを運営してホームページへに誘導するなど、どのようなルートからユーザーを呼び込むかといった点まで詳細に設計します。

2. 実績を早く作る

「事務所としてこれまでに顧客を獲得したことがない」という状態では、はたから見て本当に信頼できる事務所なのかどうか判断することができません。そのため、開業時は早めに実績を作ることを意識することが大切です。

前職の顧客をそのまま担当することができれば、実績作りや売上の安定化といった点で大きなメリットがあります。

開業時に顧客を抱えていない場合でも、知人や元顧客への挨拶を行うなどして、早い段階で顧客を獲得できるように心がけましょう。

3. 強みを打ち出す

集客や営業を行う際は、自分の強みをアピールすることで相手に興味を持ってもらえるように意識します。

これまでの経験や専門性、得意分野などから自分の強みを考えて、ホームページやチラシ・名刺などに反映しましょう。これといったアピールポイントがないと考えている場合にも「オンラインでのサポートも可能」「平日夜も対応可能」など、工夫次第で作り出すことが可能です。

4. 顧客のニーズに応える

提供したサービスの質が良く既存の顧客に満足してもらえれば、他の顧客を紹介してもらえる可能性があります。顧客に満足してもらえるよう、可能な範囲で要望に応えるようにしましょう。

中には、特別な営業をしなくても顧客からの紹介で経営が成り立っているといった事務所も存在します。

顧客の困りごとをこまめに聞いたり、丁寧な姿勢で話を聞いたりすることで、顧客からの評価を高めていきましょう。

5. 自分の可能な業務負荷を見積もる

士業として独立開業した後は自分のやり方で仕事を行えるようになるため、業務量や労働時間を適切に管理することが求められます。

特に1人で事務所を経営する場合には、本来の業務以外の事務処理も自分で行うこととなります。

「依頼を断りにくいから」といった理由で仕事を引き受けすぎて、自分のキャパシティを超えてしまうことのないように注意しましょう。

健康を損なってしまっては長期的な経営が成り立ちません。

6. 人脈を増やす

人脈が多ければ、必要となった時に声をかけてもらえる可能性が高まります。開業時にはビジネス系の交流会やセミナーに参加してみるなどして、人脈を増やすことを考えてみましょう。

見込み顧客となりそうな人とのつながりがなければ、自身で主催してセミナーや相談会を開催するのも有効です。「お金のなんでも相談会」「中小企業が知りたい税金対策」など、ターゲットとなる顧客が興味を持ちそうな内容で開催し、実際の契約につなげましょう。

7. 人間関係を良好にする

士業として独立したことを周りの人に知ってもらうと、以下をはじめとする人たちから依頼や紹介をもらえることもあります。

・前職の同僚や顧客
・プライベートの友人
・同業者
・交流会などで出会った知人
・既存の顧客

人との関係性が良好な場合には顧客を紹介してもらえる可能性が高まります。日頃から適度にコミュニケーションをとるなど、独立後はこれまで以上に人間関係に気を配るようにしましょう。

8. 市場の変化を読む

士業は他の職業に比べて安定性があると言われますが、取り巻く環境は以下のように変化する可能性があります。

・法改正により業務内容に変化が生じ、新しいチャンスが生まれる
・士業の資格取得者数が増え、競合が増える
・デジタル化への対応が当たり前になる

情報収集は欠かさずに行うことで、これらの動向をキャッチしましょう。また、市場の変化にあわせて将来的な戦略を検討することも大切です。

例えば、仮想通貨の登場によって、仮想通貨に対応できる税理士の需要が生まれました。

士業の独立開業の失敗パターン5個


士業の独立開業で陥りやすいパターンを紹介します。

1. 新規顧客が獲得できない

顧客が獲得できなければ経営が安定せず、家賃や人権費といった固定費だけ支払い続けることとなります。まずは顧客を獲得しないと、経営を続けることは難しいでしょう。

2. 完璧主義すぎる

独立開業の際は初めてのことが多く、戸惑うことや失敗することもあるかもしれません。1つ1つの物事を重く捉えすぎてしまっては時間やエネルギーを浪費してしまうでしょう。

挑戦する心を忘れず、素早く柔軟に動くことが大切です。

3. 仕事が多すぎる

独立後は売上面の不安などから仕事を断りにくく、大量に安い仕事を引き受けてしまうというケースが見受けられます。

そうすると次の手が打てず、売上が伸びづらくなります。

4. 孤立する

士業は1人でも仕事ができ、孤立しがちです。ただ、孤立すると、同業者からの顧客紹介や情報交換の機会がなくなり、だんだんと変化についていけなくなる可能性があります。ある程度意識的に外部の人との関係を作るようにしましょう。

5. 資金が足りなくなる

家賃や従業員の給与を支払えないなど、経営が苦しくなることもあります。特に成功報酬型のサービスをする場合には売上の振り込みが数ヶ月後と遅くなることもあるため、資金が不足しやすい傾向にあります。

士業の独立で失敗しないためには?

士業の独立を成功させるために、以下をはじめとする対策を行いましょう。

・自分の強みや実績をアピールする
・関わる人を大切にする
・ネットを通じた集客を行う
・顧客対応は親切に行い、評判や口コミを高める

資格だけに頼らず、経営面やマーケティングといった観点から物事を考えることも大切です。普段から良いサービスを提供することで多くの紹介をもらい、営業に時間を割かなくても高い売上を保てるような状態を目指しましょう。

また、独立すると資金の問題を常に気にかける必要があります。以下の対策を取り入れて、早めに経営を安定させるように意識するといいでしょう。

・開業後は数ヶ月間は収入がなくても問題ない金額を準備する
・前払金や着手金などを料金システムに取り入れる
・契約してもらいたいからといって値下げしすぎない

士業の集客成功事例

当社で士業の独立開業時から集客をお手伝いした実績として以下があります。

・弁護士事務所で初年度から年商4000万円突破
・税理士事務所で開業3年目に顧問先30件突破

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まとめ

士業の独立開業で成功するための方法などについて解説しました。

士業の独立で成功するためには、経営や集客について戦略的に考え、顧客や周囲の人と良好な関係を築きながら運営していくことが大切です。日頃からさまざまな方向にアンテナを張り、成功のために何をすべきか考えていきましょう。