税理士・弁護士・行政書士などの士業は高い専門性を持つ反面、その安定性から同業者が増加しやすい傾向にあります。独立開業を行うためには、集客やマーケティングといった観点も取り入れて売上を伸ばしていく必要があるでしょう。

本記事では士業の現状を踏まえた上で、士業の集客・営業方法をまとめて解説します。自身の事務所の方向性などと照らし合わせ、実践できるものを探してみてはいかがでしょうか。

士業の現状

弁護士や税理士などをはじめ、士業の数は年々増えています。そのため、顧客獲得競争は激化し、集客や営業の重要性は増しています。

<士業の人数>
・​​2022年12月1日時点の弁護士登録者数は、​​ 43,960人
・​​2022年11月末時点の税理士登録者数は、​​80,473人

士業の集客方法6個[オンライン]


ここからは、実際の集客方法について解説します。まずはオンラインで行える方法を6つ見ていきましょう。

1. ホームページ制作

ホームページを制作することはオンラインでの集客の基本です。

ホームページにサービス内容や料金、問い合わせフォームなどを設置することで、相談獲得につなげましょう。事務所の概要といった最低限必要な情報のほか、強みや人柄の伝わる情報を記載することで、顧客が依頼しやすくなります。

ホームページを持つことで事務所としての信頼性をアピールすることもできます。 他の集客方法で事務所を知ってくれた顧客に対しても、情報や安心感を提供することができるでしょう。

ホームページは自分で制作することも可能ですが、できればどこかのタイミングで依頼して集客力の強いホームページにしたほうがいいでしょう。

2. SEO


ホームページを制作した際、あわせて取り組みたいのがSEOです。SEOは「Search Engine Optimization」を略した言葉であり、日本語では「検索エンジン最適化」と言います。

SEOでは、ユーザーがGoogleなどの検索エンジンで検索した際に、自分のホームページが検索順位の上位に表示されるような施策を行います。例えば、横浜で税理士事務所を開業する場合には「税理士 横浜」といった検索キーワードで上位に表示されることを目指します。

SEOによる集客を行う場合、以下をはじめとする施策を行うことが一般的です。

・ユーザーが知りたいと思っている情報を提供する
・ページに対して適切なタイトルや見出しをつける
・適宜、ホームページの見直しや更新を行う

SEOに力を入れることでユーザーの目に触れる機会が増えれば、それだけ問い合わせをもらえる確率も高まるでしょう。

3. MEO

MEOは「Map Engine Optimization」の略であり、日本語では「マップ検索エンジン最適化」と言います。ユーザーがGoogleマップで検索した際、上位に表示されることを目指すための施策です。

MEOは「Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)」と呼ばれるサービスに登録することで行います。具体的には、以下をはじめとする施策を行うことが一般的です。

・事務所に関する情報を正しく入力する(営業時間、サービス内容など)
・ユーザーから高評価を受けられるよう意識する
・こまめに情報を更新する

Googleビジネスプロフィールは無料で始められる上、SEOよりも早く効果が出る場合もあるので、開業時にはぜひ登録しましょう。

4. リスティング広告

ホームページをより多くの人に見てもらえる方法の1つとして、リスティング広告があります。

リスティング広告とは、Googleなどでユーザーが検索した際に検索結果の上部に表示される広告です。通常の検索結果よりも目立つ位置に表示されるため、多くのユーザーに見てもらえる可能性があります。

リスティング広告を配信するためには、検索エンジンが提供する広告配信者用のホームページに登録する必要があります。「Google広告」「Yahoo!広告」をチェックしてみましょう。

5. ポータルサイト

仕事を受けたい士業と、仕事を頼みたいユーザーをマッチングさせるためのサイトです。

ユーザーはすでに「税務について相談したい」「近くの弁護士を探している」などのニーズを持っているため、成約に至りやすいメリットがあります。

ポータルサイトには多くの同業者が登録しているため、必ずしも連絡をもらえるというわけではないという点に注意が必要です。自身の強みをアピールしたり、印象の良い画像を掲載したりするなど、問い合わせを多くもらえるような工夫を行いましょう。

6. SNS

Youtube、X(Twitter)やInstagram、Facebook、TiktokなどのSNSを利用する方法もあります。

SNSは基本的に無料で始められますが、戦略的に取り組む必要があり、時間はかかりますので注意が必要です。成果が出始めると、SNSを見たユーザーがメッセージをくれたり、ホームページをチェックしてくれたりします。

SNSの運用を開始する場合は、投稿の内容や頻度を決めておくことで、統一感のある運用をすることができます。アカウントが事務所の印象やブランドにも影響することがあるため、丁寧な運用を心掛けましょう。

士業の集客方法6個[オフライン]


次に、オフラインによる事業の集客方法を紹介します。

1. 紹介

既存の顧客や同業者、前の職場の同僚などから新規顧客の紹介をもらえることがあります。質の高いサービスを提供したり、日頃からこまめにコミュニケーションを行ったりすることを意識するといいでしょう。

また、紹介をもらうためには以下の工夫も有効です。

・既存顧客へ紹介を受け付けていることを伝える
・同業者に自分の得意分野などを伝える
・ビジネス系の交流会に参加して人脈を作る
・紹介をもらっている同業者を参考にする
・知人へ定期的に挨拶状などを送る

紹介から付き合いが始まった顧客は話がスムーズで、優良顧客となりやすい可能性があります。日頃から周囲とうまくコミュニケーションをとることで、仕事の話を持ちかけやすい事務所であることを大切にしましょう。

2. セミナー

見込み顧客へセミナーを行うことで、将来的な顧客を獲得する方法もあります。

セミナー開催するためには、貸し会議室などを借り、SNSやチラシなどで参加者を募ります。「相続のお悩み相談会」「中小企業が知りたい節税対策」など、顧客の悩みを解決できそうなテーマで設定するといいでしょう。

セミナーで良い印象を与えられれば、いずれ契約につながる可能性があります。すぐに仕事につながらなくても、見込み顧客がどのようなことに悩んでいるのか知る良いきっかけとなるでしょう。

いきなりセミナーを開催することに抵抗がある場合には、オンライン限定で開催したり、見込み顧客に有益な資料やメルマガを送ったりする方法もあります。

3. 看板や屋外広告

駅や街中に広告を設置して認知度を高める方法です。多くの人が目にする場所に広告を設置することで、必要としている見込み顧客の目に入りやすくなります。

すぐに効果は出なかったとしても、何度も広告を目にするにつれて近隣住民の意識に刷り込まれ、必要な時に思い出してもらえる可能性が高まります。

広告には事務所名や強みなどをわかりやすく記載するほか、ホームページへ誘導するためのQRコードを記載すると効果的です。

近隣の同業者や店舗経営者などに広告を出している人がいれば、どれぐらいの効果を実感できたのかどうか聞いた上で検討してもいいでしょう。

4. チラシ

チラシを作成して、ターゲットとなりそうな見込み顧客のポストに直接投函する方法です。古い方法のように思えますが、チラシのデザインやターゲットの属性などによっては効果が出る場合があります。

チラシは自身やスタッフが作成してコストを抑える方法のほか、専門の業者に外注する方法もあります。チラシのデザインからポスティングまで一貫して対応してくれる業者もあるため、興味のある方は調べてみるといいでしょう。

また、新聞を購読しているような高齢者層をターゲットとしている場合には、新聞の折り込みチラシとして配布することも有効です。

5. ダイレクトメール

ダイレクトメールは代行業者に住所などのリストを提供し、はがきや封筒を送付してもらう方法です。

ダイレクトメールを利用する際はむやみに送付するよりも、ターゲットを絞って送付することで問い合わせをもらえる確率をできるだけ上げていくことが重要です。

例えば、税理士事務所がダイレクトメールを送る場合には、まだ税理士の顧問契約をしていないと思われる新しい法人を狙って送付します。戦略的に送付することで、できるだけ高い効果を目指すといいでしょう。

6. 出版

出版した書籍を見た読者からの問い合わせをもらえることもあります。

出版社から声がかかって商業出版を行った際には、多くの書店に本が並ぶため、信頼性や認知度といった面から大きなメリットがあります。手続きや販促は出版社が行ってくれるため、自身でそのような業務を行う必要もありません。

商業出版を行うためには、出版社の従業員や出版経験者といった人脈を頼ったり、メールなどで直接営業したりする方法があります。

実績が浅いなどの理由で商業出版を狙いにくい場合は、自費出版することも可能です。紙の本はもちろん、Kindleといった電子書籍の出版も視野に入れるといいでしょう。

士業の新規顧客獲得の注意点3個


士業が新規顧客を狙う場合には、どのような点に気をつけて集客を行えば良いのでしょうか。マーケティングや資金繰りといった観点から、注意すべきポイントを解説します。

1. 同業者との差別化を図る

多くの同業者がいる中で効率的に顧客を獲得するためには、同業者との差別化を行うことで「ぜひこの事務所に依頼したい」と感じてもらうことが大切です。

自分の強みを洗い出してアピールしたり、近隣の同業者が提供していないサービスなどを狙ったりすることで、差別化を図りましょう。同業者の多い地域で闇雲に集客して伸び悩むことがないよう注意が必要です。

2. 売上につながるまでの時間を意識する

一口に新規顧客と言っても、すぐに売上につながる可能性のある顧客と、将来的に売上につながる可能性のある顧客の2つに分けられます。

例えば、税理士が新規に設立した法人の顧問契約を狙っている場合などには、比較的すぐに売上につながりやすいと言えるでしょう。そのため、紹介やダイレクトメール、ポータルサイトなど即効性のある集客方法を中心に利用します。

相続税を申告する予定の顧客などを狙っている場合には、すぐに税理士が必要ないという場合も多くあります。セミナーやSEO、SNS運用などを続けることで信頼関係を築き、将来的な売上につなげるといいでしょう。

3. 既存顧客のリピートも狙う

新規顧客を獲得するためには、チラシを配布したり、広告を出稿したりと、ある程度の費用がかかることが一般的です。

それに対して、既存顧客のリピートは集客にかかる費用が不要であるため、より効率的に事業を運営することができます。リピートや継続的な契約を積極的に狙い、集客にかかる費用や手間を削減していきましょう。

まとめ

士業が行う集客方法にはさまざまなものがありますが、ターゲットとなる顧客や使える費用・時間などを考えて、より事務所に適していると思われる集客方法を選ぶことが大切です。今回紹介した方法などを参考に、より良い集客を実践しましょう。