シワは加齢によって増え、気になる人も多いものです。そのため、美容商品でもシワ関連のものは多くあります。
シワに関する広告表現と薬機法との関係について解説します。
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目次
化粧品・医薬部外品とは?
シワに関わる美容商品としては、主に化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)があります。
化粧品と医薬部外品は、薬機法上の分類が異なり、シワに関わる表現も使用できる範囲が異なります。
それぞれの薬機法上の定義は以下のとおりです。
薬機法第2条第3項
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないものイ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
化粧品の効能効果
化粧品が表現できる効能効果は次の56個です。
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひげそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38)芳香を与える。
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。
この56個の中でシワに関する表現は「(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。」です。
この効果を逸脱しない範囲で表現することが可能です。「小じわが目立たなくなる」など表現の一部を切り取って使うことはNGです。
具体的に認められる場合と認められない場合を紹介します。
<認められる表現の具体例>
・皮膚の乾燥を防いで小ジワを目立たなくします
・うるおい効果が小ジワを目立たなくします
・キメを整えて乾燥による小ジワを目立たなくします
<認められない表現の具体例>
・○○○が小ジワの悩みを解消します
・小ジワを防いで美しい素肌を育てます
・乾燥による小ジワを防いで、お肌の老化防止を…
・小ジワ*を目立たなくします。(注釈として*)..乾燥によるもの、と記載する方法)
参照元:化粧品等の適正広告ガイドライン
なお、メーキャップ化粧品であれば、確実であるかのように思わせる保証表現を使わなければ、「シワを目立たなくみせる」という表現が使えます。
注意事項
「乾燥による小ジワを目立たなくする」という表現は、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験又はそれと同等以上の適切な試験を行い、効果が確認された製品のみに標ぼうできる、とされています。
さらに、日本化粧品工業連合会自主基準では、「乾燥による小ジワを目立たなくする」またはこれを言い換えた表現を表示する場合、これらの効能に※のような印をつけたうえで、「※効能評価試験済み」と製品に表記する必要があるとしています。
医薬部外品の効能効果
薬用化粧品(医薬部外品)が使える効能効果の範囲は、「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」で以下のように紹介されています。
種類 | 効能・効果 |
1. シャンプー | ふけ、かゆみを防ぐ。 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。 毛髪・頭皮を清浄にする。 毛髪・頭皮をすこやかに保つ。 毛髪をしなやかにする。 |
2. リンス | ふけ、かゆみを防ぐ。 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。 毛髪の汗臭・脂肪を除きやすくする。 裂毛・切れ毛・枝毛を防ぐ。 毛髪・頭皮をすこやかに保つ。 毛髪をしなやかにする。 |
3. 化粧水 | 肌あれ、あれ性。 あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。 油性肌。 かみそりまけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をひきしめる、肌を清浄にする、肌を整える。 皮膚をすこやかに保つ、皮膚にうるおいを与える。 |
4. クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油 | 肌あれ、あれ性。 あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。 油性肌。 かみそりまけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をひきしめる、肌を清浄にする、肌を整える。 皮膚をすこやかに保つ、皮膚にうるおいを与える。 皮膚を保護する、皮膚の乾燥を防ぐ。 |
5. ひげそり用剤 | かみそりまけを防ぐ。 皮膚を保護し、ひげそりをやさしくする。 |
6. 日やけ止め剤 | 日やけ・雪やけによる肌あれを防ぐ。 日やけ・雪やけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 皮膚を保護する。 |
7. パック | 肌あれ、あれ性。 にきびを防ぐ。 油性肌。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をなめらかにする。 皮膚を清浄にする。 |
8. 薬用石けん(洗顔料を含む) | <殺菌剤主剤> (消炎剤主剤をあわせて配合するものを含む) 皮膚の清浄・殺菌・消毒。 体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。 <消炎剤主剤のみのもの> 皮膚の清浄、たもつ、かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。 |
(注1)作用機序によっては、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。」と認められる。
(注2)上記にかかわらず、化粧品の効能の範囲のみを標ぼうするものは、医薬部外品としては認められない。
この中にはシワにかんする表現がありませんが、医薬部外品は有効成分を配合し、承認を得ていれば、上記以外の効果も表現可能です。
そして、シワ改善効果を表現できる医薬部外品の商品はすでに多数あります。
シワ改善成分は?ナイアシンアミド?
シワ改善成分として有名なものにナイアシンアミドがありますが、他にも有効成分がありますので表にして紹介します。
医薬部外品でシワ改善を表現できる成分については、厚生労働省が有効成分として承認しています。
※日本初のシワ改善医薬部外品は、ポーラのリンクルショット(有効成分:ニールワン)です。
成分名 | 申請会社 | 認可年 |
ニールワン (正式名称は「三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム」) | ポーラ化成工業株式会社 | 2016年 |
レチノール (純粋レチノール・ピュアレチノール) | 株式会社資生堂 | 2017年 |
ナイアシンアミド (別名「ニコチン酸アミド」) | P&Gプレステージ合同会社 | 2017年 |
dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムM(VEP-M) | 日本メナード化粧品株式会社 | 2023年 |
ライスパワーNo.11+ | 勇心酒造株式会社 | 2023年 |
化粧品機能評価法ガイドライン
化粧品や医薬部外品でシワにかんする効果を表現したい場合は、抗シワ試験を行う必要があります。
「新規効能取得のための抗シワ製品評価試験ガイドライン」では、抗シワ機能評価試験を次のように考えています。
項目 | 化粧品 | 医薬部外品 |
①対象とするシワ部位 | 目尻 | 目尻 |
②推奨する被験者 | 主としてシワグレード1~3のシワを有する被験者 | 主としてシワグレード3~5のシワを有する被験者 |
③機能評価試験方法 | 遮蔽試験(評価者に塗布・無塗布群が分からないようにする) 塗布群と無塗布群での比較 | 二重遮蔽試験 有効成分含製剤塗布群(部位)とプラセボ塗布群(部位)の比較 *部位の場合は同一人の左右目尻のシワを比較 |
④評価項目 | ・シワグレード基準を用いた目視評価、写真評価 ・レプリカの二次元または三次元機器評価、あるいはin vivoでの三次元機器評価 | ・シワグレード基準を用いた目視評価、写真評価 ・レプリカの二次元または三次元機器評価、あるいはin vivoでの三次元機器評価 |
⑤有効性の判定に関する考え方 | 目視評価あるいは写真評価、機器評価の ”いずれかで” シワ改善の変化に有意差が確認できること | 目視評価あるいは写真評価、および機器評価の “両方で” シワ改善の変化に有意差が確認できること |
⑥試験期間 | 2週間以上 | 2か月以上 |
⑦効能表現 | 乾燥によるシワを目立たなくする | シワを改善する |
⑧シワ改善メカニズム | 不要 | 必要(角層の単なる保水・保湿によるものは除く) |
シワ改善の言い換え表現
薬機法上の化粧品や有効成分の入っていない薬用化粧品では「シワ改善」効果をうたうことはできません。
言い換え表現を紹介します。
・肌にうるおいを与え、ハリのある印象へ
・うるおいのある柔らかな肌へ導く
・なめらかでツヤのある肌に
・健やかな肌へサポート
・肌を若々しい印象に
・年齢に応じた肌ケアで、ハリのある肌へ
「深いシワ改善」「気になるシワに」は広告で使える?
日本化粧品工業会の「医薬部外品における「シワ改善」の広告表現に関する留意点」という資料に「深いシワ」や「気になるシワに」に対する留意点が書かれています。
まず、「深いシワ」ですが、シワの改善効果は、抗シワ効能評価ガイドラインの臨床試験で確認された程度に留める必要があり、「深いシワ」までは認められません。
次に「気になるシワに」ですが、シワに対する改善効果であることが不明瞭で、シワ予防シワ解消等と誤解を与え、効能効果の範囲を逸脱するおそれがあるとされているため、使用はできません。
これらは使ってしまいそうになる表現ですが、使用はNGです。注意しましょう。
まとめ
化粧品のシワへの効果訴求ですが、様々なルールがあり、使用には十分な注意が必要です。
逸脱した表現を使わないように、細かな点にも気をつけて広告を行っていきましょう。